2006年10月18日

『ヤバい経済学』

最近、本をたくさん読んでいるのですが、読むばかりでブログの更新もとどこっていますので、なるべく思ったことを綴るようにします。

それなりにまとめたいと思うと腰も重くなってしまいますので、なるべく軽く、でも後で自分が読み返しても参考になるようにしたいと思います。

ということで、たまたま今日読み終わった本から。
「ヤバい経済学 ─悪ガキ教授が世の裏側を探検する」
シカゴ大学経済学部で教鞭を執るスティーブン・レヴィットとジャーナリストのスティーブン・ダブナーの共著です。レヴィットの話を元に文章をジャーナリストのダブナーが書くことで、学術的な裏付けを保ちながらも読みやすい文章となっているとのふれこみです。経済学の読み物としては読みやすいです。ちなみに私は読みやすい本ばかり読んでいますが・・・。

ヤバいというのは、犯罪や八百長や差別といった内容について取り扱っているからです。

この手のものが苦手な人は読まない方がいいかもしれません。アマゾンの書評でも暗くなると感想を述べている人もいます。でも、私もその手のものは苦手ですが、興味深く読めました。

構成は、レヴィットがおもしろいと思う事柄で、それがたぶん世間の常識とづれている部分(アービトラージ?)を徹底的にデータを調べ上げ、その相関関係を列挙して類推する方法をとっています。だからとりあえず納得してしまいます。結構、極論っぽくなっているので、おもしろいと言えばおもしろいのですが、嫌いな人はそれが嫌いでしょう。私はおもしろいと思います。

よく書評でとりあげられているのが、相撲の八百長とヤクの売人の話です。
相撲の千秋楽で7勝7敗の力士が高率で8勝6敗の力士に勝つことをデータで裏付け、だからかなりの確率で八百長があると推定しています。そのことをばらした2名の元力士が不可解な死をとげたことから、翻訳者も用心深くなっています。裏にヤクザの影あり。

ヤク(クラック・コカイン)の売人がママと一緒に住んでいるのは、連中が貧乏に過ぎないから、金持ちはその地区のヘッドのみ。その組織構造はまっとうな会社のそれと同じで会計帳簿もしっかりとつけられていました。人気商売はピラミッドの下からはい上がっていく構造なので、最初は安い賃金で一生懸命働きはい上がる必要があるのです。ヤクの売人が人気商売かって、黒人社会ではそうだったのです。今はコカインの価格下落により、危険な割に将来性も少ない魅力的な仕事ではなくなっているそうです。

ここで、参考になるのは人気のある職業はある意味不遇だということです。マスコミや出版社で働きたい若者は多いのですが、彼らの多くは競争が激しいことから悪条件で働く羽目になります。まあ、それでも好きなことをやった方がいいので、よけいなお世話ですが。

不動産屋の話もおもしろかったです。よく言われるように不動産が難しいのは、情報の非対称性にある、つまり、物件があまりにもそれぞれ個性的なため、プロである不動産屋に情報が偏り個人にはうかがい知れない部分がたくさんあり、取引が不透明になります。特に不動産の売買において、不動産屋は早く売ることを考え、売り手より買い手にいい顔をします。ちょっとくらい高くあげても手数料は微々たるものなのでインセンティブ(動機付け:この本のテーマなのですが)が働かないことが理由です。さっさと売った方がよいのです。ところが自分の家を売るときにはもう少し粘って数%高く売っているのです。

あと不動産広告の読み方。
具体的な表現はいい家。抽象的な表現「環境良好」「!」などはほかに特質すべき点のないだめな家だそうです。結構これには納得しました。中古の不動産広告をよく見るのですが、そういえば「環境良好」多いなと納得。

アメリカ特有なのかもしれませんが、犯罪減少に一番役立ったのは、なんと「中絶」。
要は、中絶が必要なのが若い、貧乏、低学歴、未婚といった連中で、彼らの子供が将来の犯罪予備軍だからというのが理由です。これは相関関係を越えて、因果関係として紹介していました。他国のケース、米国内の実施箇所のデータから導いています。

犯罪減少に貢献するのは警察の数を増やすこと、軽犯罪の懲罰を厳しくすることについては、いい情報だなと。今後の日本を考える上でも参考になるなと思いました。

ちなみに、中絶と殺人の数の比較がよくわかりづらかったのですが、年間中絶件数150万に対して、犯罪被害者が1万5千人と書いてありましたが、胎児と新生児の生命比較をしても胎児の多くの生命を犠牲にしていると結んでいたような気がします。
要は、「中絶増加と犯罪減少の交換条件は、経済学者の言葉を使えば、ひどく非効率なのである。」ということは、そういうことなのかなと思いますが・・・。

最後の2節は子育てについてです。
この本を読もうと思ったのも、これが理由の一つだったくらいです。

・いい学校に入れることがいいことか。
いいに決まっているじゃないか、だからみんな受験競争にはまるわけで。
あまり関係ないと言っています。折しもいま安倍政権では教育再生会議でもバウチャー制度が話し合われているようですが(ほとんど文科省でつぶされたみたいですが)、いい学校に行くのはあまり関係ないみたいです。しかし、いい学校に行きたいという家の子は教育に熱心なので、希望の学校に行けなくてもその子なりの成績を残すそうです。

もちろん、授業にもならないようなだめな学校に行くとだめみたいですが。ちなみに、日本の公教育、特に小中学校がひどいという話はよく聞きます。それも首都圏が特にひどいのでしょうか。橘玲氏によると公立校は無法地帯だそうで、私立は退学させる権利を持っているだけ、子供が安心なのだそうで。つまりレベルの高い学校に行くために私立に行くのではなく、子供の安全を確保するために私立に行くことが多いそうです。

教育に関する部分は米国の白人黒人といった格差(差別)社会が反映されているので、日本にそのまま当てはめられませんが、親が何をやったかではなくて、親がどんな人かで子供の学力が決まるという点は、日本とは若干違うような気がしました。つくづく日本は、機会平等な社会な気がします。

子供の名前も結局あまり関係なくて、要は変な名前を付ける親は低学歴だったりということで、日本には当てはまりませんでした。名前も、いい名前をつけることは、それだけ子供の幸せを親が願っていればよいのではないでしょうか。インセンティブという点では、黒人が黒人らしい名前をつけるのは、黒人から差別されたくないからだそうです。

教育に関しては、ちょっと肩すかしにあった感じでしたが、日本はいいなということを実感したことと、月並みですが親の子供に対する愛情が大切であると実感しました。

この本は経済的な立場から、人の行動に関する動機付けという部分を柱にとらえることができるのでしょうが、テーマはレヴィットの興味のおもむくままとなっています。

エコノミストで『マネーロンダリング』の著者である門倉貴史氏が書評を書いていたのは、納得しました。この本も最近読みましたので、また紹介したいと思います。


posted by 金時 at 21:23| お薦め図書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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